開発思想

「人工頭脳の創造」(Creation of The Artificial Brain)

<人工知能と人工頭脳>

 人工知能(AI:Artificial Intelligence)は、人間の知的活動をコンピュータのプログラムを用いて人工的に実現しようとする試みであり、飛行機や車などの社会インフラから家庭電化製品、産業用ロボット、戦争兵器まで、あらゆる分野で導入が進められている。人工知能の特徴は、コンピュータに人の知的活動と同じ機能を持たせることにより、社会活動全般を支援しようとしている。つまり我々人間は、人工知能の支援により自分で考えなくても自分で工夫しなくても、人工知能が未来の社会を支援してくれるのである。
 しかし、人工知能を含めたあらゆるシステムは、そのシステム全体を理解している開発技術者が皆無であり、すべての技術者がコンピュータを頼りながら、そのシステムの一部分しか理解できていない。このまま人工知能が進化すれば、この傾向はさらに強まっていくものであり、我々のような専門家はその将来を非常に危惧している。
 それは、まるで社会全体が介護福祉施設のようになることでもある。社会や経済は、全人類が地球規模で共に切磋琢磨して協調的に競争することで成立している。世界の経済活動が、人工知能に制御された介護福祉体制になったとしたら、未来の経済活動や社会そして国家は存続するであろうか。国家機能や国家安全が、すべて人工知能の支援によって守られるのであろうか。過去の歴史の中で我々人類は常に想定外のことに直面し、多くの想定外のことを自らの努力で解決したのである。人工知能が想定外の危機に対処できないことを決して忘れるべきではない。
 脳のメカニズムは、殆ど解明されていない状況である。拡大し続ける宇宙のごとく「脳の小宇宙」は、宇宙の膨張と同期するように進化し続けている。今、人工知能を用いて外部から健常者の機能を進化させようとする企みがある。そのような試みは、人類の進化を誤った方向に導く可能性を持ち、さらには人類の進化を停止させる危機を内包している。
 我々人類に未来があるとしたら、我々は人工知能に対して、社会や経済活動の将来を妨げるような人工知能の開発を統制する必要があるだろう。また、人工知能の存続を認めるのであれば、我々人類は人工知能を統制管理する能力を備えるべきである。

 人工頭脳(AB:Artificial Brain)は、人の脳の働きと同じ機能を備えた人工的な脳を意味しており、我々が開発を目指している人工頭脳は思想的にすべての面で人工知能と異なることを意識している。我々が開発しようとする人工頭脳の役割は、常に人が主役であり、人が人工知能を制御できる能力を高めるために人に寄り添うことである。そのために人工頭脳は小宇宙のような人類の脳の働きを理解し、未来の人々に暴れ馬のような人工知能に乗りこなす力を支援することである。 多くの科学者は、「フォークの文化」から「箸の文化」へ旅をすることを考えるべきであろう。


<人工頭脳の創造>

 HccP GUMTO Lab.社は、CEOである尾崎と知識戦略学者であるRichard A. GUMTO Ph.D.が求める世界を実現するための会社である。その目的の一つに「人工頭脳の創造」があり、それを実現するために我が社は存在する。

 本格的な研究から10年、当初計画の挫折から40年、我が社は人工頭脳創造の黎明期を向かえることができた。現在の人工知能が高度情報基盤を基にした途方もなく巨大な複合戦略戦艦だとすると、開発する人工頭脳は水陸空そして宇宙空間における機能創造型未来戦闘機に例えることができる。
 開発する人工頭脳がどのようなものかはそのような例からも想像できるだろう。現在、設計中の人工頭脳は3世代の開発過程を経ることになる。第1,2世代では人工知能を操縦する優れた人材の育成も同時に必要である。しかし、第3世代ではその必要もなくなるであろう。
 人工頭脳を操縦する人材の育成は、極めて重要なプロジェクトである。しかし、現在の教育システムでは我々が期待する人材の育成が不可能であり、そのような教育機関で長く指導を受けた人材ほど不必要な思考を定着させる傾向が強い。我々が必要とする人材の育成は、現在の教育システムとは異なるものである。そのことは、我々が半世紀における研究活動及び教育指導から実感してきたものでもある。
 現在の企業活動では、巨大なプログラム群や人工知能で活動範囲を固定化した大規模なネットワークシステムの制御下において、日々、システムにより予定された活動のみを実施している。そのためすべての社員は、そのシステムの制御下において許容される範囲に限定された創造的な活動に満足している。高度で専門的な企業活動そのものは人の「無意識」な活動が基本となっており、固定的なシステムの制御下では「無意識」な活動の進化が抑圧される。高度な専門活動は、人の「意識」的な活動が「無意識」な活動に組み込まれることにより成立する。そして現状においては、人間こそがコンピュータやシステムを超えた創造性を発揮する高度で知的な機能を保持しており、企業活動の中でその素晴らしい機能を発揮することが極めて重要である。
 人工頭脳の目的は人に対する効果的な知的支援であり、人と人工頭脳による穏やかな知的協演である。そのために、人工頭脳の開発と未来型人材育成計画を同時に発展させる必要がある。特に人材の育成は、未来社会に適応できる人材の育成であり、企業や国家にとって戦略上、その育成計画が極めて重要なものとなるであろう。人工頭脳の設計だけであれば、既存のネットワークや大規模システムの設計思想を超えれば比較的簡単に設計できるものと考える。しかし、人工頭脳そのものが戦略的自律型進化を遂げるためには、社会システムを越えた10年程度の思考錯誤を覚悟する必要がある。